2001年4月創刊
発行 廣済堂出版
編集委員 柏木博、黒崎政男、香山リカ
AD 田代睦三

かつてのニューアカ・ブームもどこへやら、
書店の「社会学」や「思想・哲学」の棚は縮小を続け、
いまや「精神世界」のとなりに
ひっそりと肩を並べる人文科学系出版物たち。
編集委員会曰く、近代を支えてきた「知」が
とっくに有効性を持たないことが指摘されようとも、
しかし世界は、止まっていてくれはしないのだ。
廣済堂ライブラリーは、そのような状況下に
「知」の復権と書店の棚の確保を目指して、
若手研究者、ジャーナリスト、評論家等の
最新の成果を世に問いつづけるために
隔月二冊刊行の予定で今年春、創刊された。
「腕時計」「サッカー」「中里介山」「マクルーハン」…
さまざまなキーワードを軸に、混沌とした
「現代」を読み取っていくシリーズ。
B6変型、軽くて薄い、定価1000円の中に
柏木博、港千尋、高橋敏夫、今福龍太といった
気鋭の論客が繰り広げる
エンタテインメントな知性の世界は、
日本における新しい出版文化の可能性を
切り拓いていくかもしれない。

白い本は汚れやすい。
だから流通や書店では嫌われる。
ましてファンシーペーパーのPPなしだ。
しかし自分の書棚を想像して欲しい。
白い本は美しい。紙の色は美しい。
まして手垢がついて汚れた本はもっと美しい。
キュウリだって曲がっていても
美味しいほうがいいに決まっている。
チーズのカビも美しいのだ。
で、ジャケット、カバー、帯と徹底的に
人工的な色を排した造本デザイン。
同時に上製薄表紙の採用で、
かばんに入れてもかさばらない、重くない、
でもしっかりした本を目指した。

美しい組版はエディトリアル・デザインにおける永遠のテーマだ。
ましてこのDTP化が進行する時代に、確かな組版技術は、伝統工芸のように、
風前の灯火なのかも知れない。それでは決していけないはずなのだが…。
このシリーズでも組版の美しさ(読みやすさ、オーソドキシー、新しさ…)を追求したが、
残念ながら不満は残る。しかし著作の内容、文体のリズム、それらを総合的に判断し、
同一フォーマット内にヴィジュアル化し、「本の中身」を作っていく作業には醍醐味がある。
しかしその結果どうであるかは読者の批判を待たねばならないだろう。
購入、一読した方はぜひblanc@blanc.co.jpまでご批判をお寄せください。

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